超絶久しぶりに放置プレイしていたマフィア話を書いてみた三津峰です。
やっとこ纏まったので、中編をブログに載っけておきます。
あははー覚えている人は居るのかしら?(笑)
ちょっと休憩挟んだお陰で、割合サクサク進みました。
やっぱり偶にだと書き易いらしい、素敵な捏造マフィア話。
話が進むごとに士郎さんがどんどん人外魔境染みて行きます。(爆笑)
いやぁ、面白い。ホント、面白い。
書いててこんなにも楽しい、限り無く長編に近い短編?的な話はありませんよw
まだまだ増える予感がぎゅんぎゅんします。>w<b
それから、拍手どうも有難う御座います。頑張りますね!^-^
「大分動けるようになったね、お兄さん」
子供と奇妙な共同生活が始まってから、二十日余り。
まだ引き攣る痛みは微かに残ってはいるが、日常生活を営む分には何等問題無いまでに回復していた。
子供、―“士郎”の的確な手当てのお陰で術後の経過も頗る良く、回復の早さも並では無い。
士郎が殺した医者の腕も、大した物であったようだが。
「この分なら、お前の願いとやらに携わっても問題あるまい。…お前は一体、俺に何をさせたいんだ?」
「………」
「士郎?」
全快、とは行かないまでも、それなりに動けるようになった今、士郎の願いとやらをそろそろ聞いても良さそうだ。
そう思って、何気無く真意を明かせ、と士郎へ促してみれば、少し難しい貌を見せて押し黙るから内心僅かに首を傾げる。
其処まで渋らねばならないような願いなのだろうか?
「まぁ、そろそろ頃合だよね。分かった。ちょっと大掛かりかも知れないんだけど、聞いてくれる?」
「ああ」
「あのね…潰したいんだ、この街を」
「…何だと?」
さらり、と。至極あっさり、何でも無い事のように紡がれた言葉の威力は相当で。
思わず凝視するように士郎を視界に捉えて、聞き返してしまう。
今、コレは何と言った?街一つ潰したい、と。そう言いはしなかっただろうか。
「だって、この街にもう用は無いもの。準備はね、してあるんだ。だけど、おれだけじゃ最後の仕上げが出来なくてさ」
「…それで、俺を?」
「うん。お兄さん、頭良いし。おれと“同じ匂い”がするから…この人なら、てつだってくれるかな、と思って助けたんだ」
にっこりと屈託無く冷えた琥珀で笑む士郎は、やはり何処か子供らしく無かった。
いや、いっそ人間らしく無い、と言った方が良いだろうか。
本当に、何処で如何育てられればこんなクレイジーな発想が、この歳で出て来るようになるのか不思議でならない。
“己が居た証を全て消す”
その為だけに、街一つ道連れに消し去りたいとは、恐れ入る。
一瞬、この発言で本物の気狂いかとも思ったが、それは違う。
眸を見れば分かった。
これは冷静な判断の元に決断を下し、本気でそうする、と言っているのだ。
その為の準備も既に終えてあるのだ、と。
己の望みを叶える為ならば、如何なる手段であろうと厭わずに行なえる類の人間。
誰が死のうと、幾ら他者を踏み躙ろうと、関係無い。
己が目的の為であれば恐らく、どれだけ血が流されようと気にも留めない筈だ。
コレは、笑って全てを破壊し尽くす覚悟を持つ者。
踏み潰した屍の怨嗟も憎悪も慷慨(こうがい)も、その全てを呑み込んで尚、高らかに哄(わら)う者。
そんな悪意を根底に隠し持つと言うのか、この子供は。
「は、大したタマだな。良い度胸だ」
「てつだってくれるんでしょ?」
「良いだろう。一度引き受けると言ったんだ。お前の望み通り、この街一つ潰す手伝いをしてやろう」
「ふふ…ありがとう、お兄さん」
ふわ、と口角を撓らせて士郎が笑う。
この分では、本当に街を潰す手筈が着実に整っていそうである。
俺と同じタイプの人間であるのなら、無意味な嘘も誇張もしない筈だ。
「だが、理由は訊かせて貰う。それくらい、別に構わんのだろう?」
「…いいよ。なら、実物見せた方が早いかな? 付いて来て」
ちょいちょい、と小さな掌で手招きしながら士郎が踵を返すから、腰掛けていた寝台を降りてその後に続く。
何処へ誘う気かは知れないが、それで理由が分かると言うのなら付いて行くまで。
随分と久方ぶりに外へと出れば、湿気を多分に含む冷やりと凍えた空気が頬を掠めた。
空は相変わらず陰鬱な曇天で、辺りは霧が立ち込めている。
只、本日は以前と違って碌に己の足元さえ見えない程、霧が濃い訳では無いらしい。
「はぐれないでね」
「ああ」
それでも数Mも士郎と距離が開けば、姿が霧に紛れてしまう為、適度な距離を保って士郎を追った。
灰色の街。淀んだまま凍える空気。
半ば凍り掛けた濡れた路面を踏締める音以外、精々衣擦れの音しか拾えない。
暗黙の了解であるかの如く、死んだように押し黙り、しんと静まり返っている街に人の気配は酷く希薄である。
「…随分と静かな街だな」
「半分死に掛けているからね」
「ん、如何言う意味だ」
何処の最下層エリアとて、小さな小競り合いや物乞い、酔っ払いの乱闘、等と言った喧騒は絶えないものだが。
この街の不気味な程の静けさは、少しばかり奇異に映った。
微かな異臭や腐臭が漂う事から、恐らく最下層エリアらしくこの路地裏にも幾つか死体が転がっていると思われる。
然し、街を包む冷気が死体の腐敗を遅延させ、立ち込める霧がそれらを覆い隠す役割をしているようだった。
「ライフラインが切れているんだよ。この寒さと、この前あった派手な戦争で、ね」
「…ほう?」
“派手な戦争”
それは俺が所属していた組織と、この辺り一体を統べていた組織との諍いの事であると見て大凡間違いは無いだろう。
此処で直接争いがあった訳では無いが、この上層部のエリアで派手に殺り合った為、周囲のエリアでも被害は確実に及んでいる。
戦地になった場所は殆ど機能しない程に徹底した破壊工作があったから、その煽りでも喰らったか。
中層部以下の掃き溜めのような地では、先ず何の援助も受けられまい。
士郎の言う“半ば死に掛けの街”と言う表現こそが、この街の現状の全てであるようだ。
「ぐうぜんだったけど、良いタイミングだったなァ」
「…お前にとっては、か?」
「うん。おかげで、10年は早くココを抜けられそうだもの♪」
フンフン、と機嫌も好さそうに士郎が鼻歌交じりにそう告げた。
10年、と言う事は、元々10年単位でこの街を潰す計画を立てていたようである。
「気の長い事だな?」
「そうでもないよ?」
少なくとも大人になれば、おれも自由に動けるでしょう?
クスクスと喜悦交じりに笑む士郎が、ちらり、と俺を小さく仰ぎながらも不穏な影をその琥珀へ滲ませた。
“己”と言う最大の“道具”の利用価値を、士郎は正しく理解しているらしい。
揺ぎ無い確信に満ちた眸がそう語る。
賢しい事だ。だが、それが本物であるが故、俺も動く気になったのだ。
もう10年、コレが早く生まれていれば。
或いは、障害として俺の目前に立ちはだかったかも知れ得ぬ類稀な“才”であろう。
否、生き残れば何れ必ず裏の世界で頭角を現す事は間違いない。
コレはそれを遣って退けるだけの生まれながらの資質と、それに見合う気宇を持つ。
「…末恐ろしい奴だ」
「ふふ。ありがと?」
決して褒めてはいないのだが。
分かっていて尚、それでも真っ直ぐに俺を見据えて笑みを浮かべられるとは、良い度胸であると言えた。
「ここだよ」
相も変わらず、事前情報の無い俺には到底理解し得ない複雑な地理を、決して見晴らしが良いとは言えない
霧の中で惑い無く歩いて見せた士郎が、突如現れた白い扉に手を掛けた所で目的地の到着を小さく告げる。
それに頷いて見せれば、すぐにそのまま固く閉ざされた扉を体重を乗せるようにして押し開いた。
ギギギ、と予想外に重い音が響く為、士郎では些か手に余ろう、と僅かに開いた扉に自らも手を掛けて押し開く。
大人一人入れる程度扉が開いた所で中へと躰を滑り込ませてみれば。
ヒヤリ、とした外よりも尚冷たい、文字通り凍った空気が膚を刺す。
「……何だ、此処は…」
微かな痛みを訴える程に意図的に冷やされた空気に、疑問を漏らすと、すぐに士郎から業務用の冷凍庫だと返される。
業務用の冷凍庫。そんなものに一体何用か、と僅かに訝しがりながらも、士郎がまた奥へと進んで行く為、後へと続く。
出入り口の扉は、中からは開けられない、との事であった為、そのまま開け放したままにしておいた。
こんな所に閉じ込められでもしたら、あっと言う間に生きながらにして冷凍されてしまうだろう。
流石に、それは少しばかり御免被りたい所だ。
「こっちだよ。これ、…見て?」
奥まった所にある四角く切り開かれた空間。
其処で漸く歩を止めた士郎が、緩く手招きしながら黒く細長い箱を開ける。
促されるがまま、その箱の中を覗いて驚く。
中には、まだ若い女が一人、凍った花に半ば以上埋もれるようにして横たえられ、安置されていたのだ。
「これ、は…」
「おれの“おかーさん”だった人、かな」
己の母親だと言う冷凍人間を見せて、士郎は薄く微笑みを見せた。
薄ら寒くなるような、無機質で酷く刻薄なその微笑。
場所だけの所為では有り得ない、確かな冷気を垣間見せた事から得心が行く。
手に掛けた張本人は士郎だな、と。
「これもお前が?」
「ん。そうだよ。あんまりにも“カワイソウな人”だから、おれが“カイホウ”してあげたんだ」
「可哀想?」
「この人、きれいでしょ? 前はね、ちゃんとした“お姫サマ”だったんだよ」
あっさりと俺の訊いに頷きを返しつつ、尚も薄く笑んで母親の亡骸に手を触れる士郎が口にした言葉に微かな引っ掛かりを覚える。
今“姫”、と言ったか。士郎は?
では、嘗ては何処ぞの貴族の娘であったとでも言うのだろうか。
確かに、既に息絶えて久しいようだが、死して尚、その亡骸は“美しい”と称される類のものであるだろう。
少しばかり窶れて見えるが、それを除けば、見目は麗しく育ちは割と良さそうに見えた。
「………」
だが、この女が貴族の出であるなら、何故士郎が最下層などに?
…ああ、そうか。そうだな。そうに決まっている。
ソレこそが、士郎が消してしまいたいと望む最大の“理由”であるのだろう。
この女が真実、貴族の娘であったのなら、最下層に留まった理由は如何あれ、士郎がその存在を隠さねばならん“秘密”があるようだ。
「なるほど。お前の存在が明らかにされては、困る連中が居るのだな?」
「あはは、やっぱりお兄さんは頭良いね」
くすくす、と吐息だけで笑みを溢す士郎が、黒い棺に凭れるようにして母親の頬を撫でる手を止め、俺を仰ぐ。
何処の貴族の者かは分からんが、その存在が知れれば、士郎は人知れずひっそりと闇に葬り去られかねん。
母親がこんな所に居た、と言う事は、恐らくそう言う事なのだろう。
自らの意思で逃げ込んだにせよ、放り込まれたにせよ、士郎を消すくらいいとも容易く遣って退けそうだ。
ソレを正しく理解し、また危惧している士郎は“対策案”として途方も無いあの“計画”を練ったと見て間違い無かろう。
概ね理解した所で緩く口角を吊り上げて見せれば、士郎も薄っすらと口端に浮かべる笑みを深めた。
「おれの存在が外に知れちゃマズイんだ。だけど、おれはこの街を出て行きたい。あと、この人をちゃんとほうむってあげたいし、ね?」
「街一つ道連れに弔い、か。お前の過去と、お前の母親を?」
「そう言う事。ミョウアン、ってヤツでしょ?」
小さく小首を傾げながら、既に決定事項である事柄をさらりを述べる。
そして、こうも言ったのだ。
“電源が生きている内に綺麗なまま、この母親を葬りたい”と。
確かにライフラインが切れているらしい今、そう長くは電力供給も保ちはしまい。
半分死に掛けた街で事を起こすなら、今がまさに最大の好機たるその瞬間(トキ)だ。
士郎の行動理由は判明したし、望みも分かった。
最早俺に、士郎の行動を阻む考えなぞ欠片も起きはしない。
乞われるがまま、士郎の手を取る。
そうして、悲願成就の手助けを少しばかりしてやる旨を怜悧な琥珀に約してやった。
ちょっと間が空いてしまいましたが、マフィア軸の擬似親子成立直前の過去話の中編です!(え、長い…)
やっぱり案の定、と言うか何と言うか…。
話が延々と長くなったので“中編”と言う形で切ってしまいました。=w=;
次回で終わる予定です。頑張るぞ。>w<
そして、やはり只者では無かった子士郎さん。ママさんを自分で殺っちゃったらしいです。(汗)
まぁ理由はちゃんと設定上はあるんですけれど、次回ソレも盛り込めるかな…。
後編がやたらめったら長ったらしくなったら、もう笑って下さい、ね…?(短く纏める努力をしなさい)