こんばんは。
久々にマフィア設定の昼メロ本編を書いてみた三津峰です。
粗筋だけざっと書いてあったものに、足りない補足と肉付けをして仕上げてみました。
内容的には、一ヶ月程前に書いた二重取引話の後、主である士郎さんに、何とかして
慎二君を掻っ攫って来い、と言われた弓兵が、それを忠実に実行した直後のお話です。(笑)
と言っても、今回は慎二君と士郎さんがメインなんですけどね。
弓兵も最初だけちらっと出ますよ。ええ、ちらっと。。。=w=;
そして、早く書きたくて書きたくてウズウズしていた部分は確り書いた!と、思う。多分。
取り敢えず、衝撃の真実?を此処らで書きたかったので私的には満足しました。(*´ェ`*)
「よくやったな、エミヤ」
従者の小脇に抱えられる少年は、俺が待ち望んだ者。『間桐慎二』。
先日、ちまちまとウチに地味なちょっかいを掛けていた人間だ。
今は薬か、当身か、何れかの手段で以って意識を失っている少年を横目に俺は己が従者に労いの言葉を掛けてやった。
攫え、と言った俺の言葉通り、忠実に命を実行した従者には後で存分に構い倒してやろうと思う。
だが、今はこの少年が先だ。
緻密な計算の上に、漸く今この一時だけ【遠坂】に気取られず会合が果たせるとして、態々この日、この時間の為だけに色々と都合を付けて準備してきたのだ。
それをむざむざ、俺が無駄にするつもりは無い。
「武装は?」
「全て外してある」
「そうか。…では、エミヤ。お前は下がって良い」
事前調査から、慎二相手に二人掛りでは何も情報が引き出せそうに無い事は明白。
手を振って下がれ、と従者へ命じればすぐに訊うような眼差しが返された。
「…マスター。一人で、平気か?」
「ああ。別に如何と言う事は無いし、コレには少し込み入った話をしたいからな」
「ふむ…承知した。では、オレは外で待機しているから、何かあれば呼んでくれ」
「分かった」
ちらと慎二を一瞥した従者は、俺の返答を聞いた後に一つ頷き、さっと踵を返して部屋を出て行く。
流石にそう大して体格の変わらない慎二相手に俺が如何こうされる訳も無し、と判断したようである。
賢明な判断だ。俺も、慎二に体術で負けるとは欠片程度にも思えない。
まぁ、専ら俺の得意分野は銃であるけれど。それは今は良いだろう。当の銃も俺は持っている訳だし。
「さて、と…おい。何時まで寝ている。間桐慎二、起きろ」
靴先で伸びている慎二を頬を小突くようにして、覚醒を促す。
別に蹴り上げて問答無用で起こしてやっても良いが、そんな事をすれば慎二が俺と接触を持った事を【遠坂】へ態々教えてやるようなものだ。
流石に今すぐ殺すつもりがある訳でも無し、貌に傷一つ付けるつもりは無かった。
「間桐慎二。起きろ」
もう一度、常の調子で冷やかに呼び掛けて少し強めに頬を小突けば、漸く慎二から覚醒の兆しを返される。
それを無感動に見下ろす形で眺めてやれば、眸を開いた慎二が俺をその視界に映してから吃驚(きっきょう)の眼差しで後退さった。
「な、だ…誰だよっお前っ!!僕をこんな所に閉じ込めて如何するつもりだ!!こんな事して、唯で済むと思っているのか!?」
「うん?」
「ぼ、僕を誰だか知らないのか!?」
「間桐慎二だろ」
あっさり答えてやれば、なら何故僕を拘束するんだ、と尚も盛大に喚き散らして喧しい事この上ない。
やれやれ、こんなお子様だったとは。もっと冷静で頭のキレる奴かと思えば…何と言うか、拍子抜けだ。
「何だ、中身もてんで子供では無いか。…予想外だな」
「お前だってまだ子供だろ!? 僕と同じくらいだろうが…誰だよ、一体!僕をこんな所に閉じ込めて!」
「…“お前”、ね。まぁ良い。少しは黙れ? 余り喚くと撃ち殺すぞ?」
「っ!?」
呆れて溜息を吐けば、己の立場も忘れて喚くからいい加減面倒になって銃器をちらつかせてやる事にした。
素早く引き抜いた手に馴染んだ銃の照準をピタリと慎二の額に合わせて、微かな笑みを浮かべたままセーフティを解除した状態で向けてやる。
余り其処いらの低俗なチンピラ紛いな行動はしたくないのだが、まぁ仕方が無い。俺は喧しいのは好かないのだ。
殺す気は無かったが、これで黙らなければ即行殺す。小首さえ傾げて眼差し一つでそう告げれば、ようやっと慎二が口を噤んだ。
「ふむ。大人しくなったな」
「何て物騒なヤツなんだ…それから、名前くらい名乗ったら如何なんだ? 無礼だろ」
「ん? ああ、それは失礼したな。俺は言峰士郎だ。無作法で悪かったな?」
慎二の物言いが少しばかり可笑しくて、くつりと喉奥で笑ってから銃を下げ、そのまま序でと名乗ってやれば今度こそぴたりと押し黙られた。
何だ、と思って内心で訝しんでいれば、何やらぶるぶると震える指で人を指差して、じっと視線を固定される。
「………言峰…?」
「ああ」
「【言峰ファミリー】か…ぽっと出の人間が、僕に何の用だ!?」
漸く趣旨を正しく理解したらしい慎二が、ギっと俺を睨み付けるようにして仰ぐから、ああコレはもしかしなくとも、歪んだプライドと権力に固執する類の人間であろうか、との考えが瞬時に脳裏を過ぎった。
恐らく、間違ってはいまい。
俺を“ぽっと出”と称し、先まであからさまに得体の知れぬ俺に怯えていた眸が輝きを取り戻した事からもそれは概ね正しかろう。
身分が低い、と思っているからこそ、俺をそうして見下しているのだ。
典型的な華族、お貴族様思考と言う訳だな。…面白い。
“癇癪持ちの只の子供”そんな詰まらぬ人間ならば殺してやろうかとも思ったが、そう言う事なら少しばかり遊んでやっても良いだろう。
如何言った反応を返してくれるのか、少しばかり興味もあるしな。
邪魔になれば殺せば良い。故に、喜べ。今から俺と親父以外の何人も知らぬ話をお前だけにしてやろう。
「…へぇ? ぽっと出の人間、ね。言ってくれるじゃないか?」
「間違って無いだろ!?」
「ああ。そうだ。間違ってはいないな」
ニヤリと哂い、徐に壁際にまで後退っていた慎二まで歩を進めて、その傍らに膝を突いてやる。
間近に迫った俺が真っ直ぐに睨む慎二の眸を真正面から受け止めてやれば、あからさまに動揺して慎二が怯んだ。
雰囲気に呑まれるようでは、まだまだ子供。
けれど、そうだな。俺を相手にプライドだけで眸を逸らさなかった事は褒めてやっても良いかも知れない。
「…な、何だよ」
「だが…お前が今そうして見下す人間(おれ)こそが、お前が主筋として従う【遠坂】の血に連なる者だとしたら?」
「え?」
告げられた言葉に意表を突かれたのだろう。
一瞬ぽかんと見返された後、次いで薄っすらと紫掛かった青い眸が驚愕に見開かれた。
ああ、イイ貌をする。
うっそりと酷く嗜虐に満ちた笑みで以って撓る口角を其処へ写しながら、俺は慎二の白い頬へ手を伸ばし、静かにその耳元へと内緒話のように甘く囁く。
「それも、直系。お前が膝を折る現当主と同じ血脈に連なる、と言ったら如何するのだ?」
「なっそんな、莫迦な!? 有り得ないっ」
「信じる信じないはお前次第だ…ああ、そうだな。この痣に見覚えは、…無いか?」
極度の震駭(しんがい)に震える慎二をそのままに、立ち上がった俺は、ゆったりと衣服を乱して己の左肩付近を背を向ける形で露にしてやった。
【遠坂】に仕える桜の婚約者なれば、或いはこの痣にも見覚えがある筈。
ちらと、背後を覗けば案の定、慎二の視線が痛い程、背の痣に集中している。
「………そん、な…【遠坂】の…刻、印…っ!?」
「やはりお前も知っていたか。そう、コレは【遠坂】の直系のみに顕れる印らしいな? 俺の母親も、コレと同じものを持っていたよ」
彼女は俺と違って右腕の肘裏辺り。確かその辺にコレと同じ痣を持っていた筈だ。ま、今は如何でも良い事だけれど。
「……ア…アンタ、一体…何者なんだ?」
「…さぁ? 何者だと思う? お前は知っているかな。20年近く前に追放された前当主の娘の話を?」
さっと衣服を直して、向き直り、再び慎二を見下ろす形で薄っすらと口角を撓らせる。
「っこ、『紅貴妃』!?」
「ああ、何だ。知っているのか」
「まさか…彼女は殺された筈だ!【アインツベルン】の手先に!」
「一般的には、な。だが生きていたんだよ。可哀想に。身重の躯で、最下層に放り込まれて、な?」
『紅貴妃』、懐かしい響きだ。
今でこそ、口に乗せる事すら憚られるかの如く忌み名になってしまっているけれど。
確かに当時の社交界と言う表社会から抹殺された彼女の通り名はそんなものだった。
子である俺から見ても、その名に相応しい教養と美しさと品位を備えた女性だったと思う。
そして、同時に愚かしい人でもあった。純粋であったが故に、体良く騙され、利用し尽くされる程度には。
「……」
「よく考えてみろ? 何か可笑しいとは思わなかったか? 何も疑問には思わなかった?
…本当に?」
深窓のご令嬢宜しく【遠坂】に厳重に護られた、真実、前当主の自慢の娘であった筈の彼女が、何故【アインツベルン】に容易く生命を奪われた等と信じられるのか。
彼女は死んでなどいなかった。何故ならば、その当主にこそ生かされたまま最下層に放り込まれたのだから。
あの刻、せめてもの情けで殺してやれば良かったものを。
俺を身篭ったと知った当主が、浅はかにも己が激情に任せて、傅かれる事が当たり前であった者をよりにもよって最下層などに放り込んだのだ。
何の援助も無いままに。文字通り、勘当、と言う名の追放処置として。
「彼女の墓を見た事があるか? 誰か其処を訪れる者は? 【アインツベルン】に生命を奪われたと言うならば、そもそも如何様にその収拾が付けられた?
…幾ら調べようと、彼女の死の痕跡など何一つ無く、溺愛と言って良い程可愛がられていた割りに、不自然なくらい話題に上る事が無いだろう?」
莫大な金と力で全てを捩じ伏せてまで巧みに隠蔽されているだろう事実。一般的には、恐らく欠片たりとも知らされていないだろうソレ。
けれど、コレは曲りなりにも直系の【遠坂】に仕える人間(モノ)。
少しでも何かが引っかかり疑問に思っていれば、ほんの一欠けらだろうと何かしら調べている筈だ。
『紅貴妃』の通り名がすぐに出て来るくらいだし、ある程度は識っていると見て間違いは無い。
俺の出生など、最上級のトップシークレット。俺と育ての親であり、実質今現在の父親である綺礼以外、何人たりとも知り得ない極秘事項である。
「…衛宮…の、子…」
「うん?」
「アンタ…いや、貴方、は…『紅貴妃』と衛宮切嗣の…子、ですね?」
愚かだが、頭は悪く無いらしい。寧ろ、よく単独で調べた方だろう。
ほんの少し与えたヒントで徹底して幾重にも隠された真実の中、俺と衛宮を結び付けるとは、な。
暗躍していた衛宮の話など、当時でも『紅貴妃』の懐妊が知れるまで【遠坂】にすら知られる事は無かったと言うのに。
上層部しか知らず、その上層部が直(ひた)隠しにしているソレを識るとなれば、中々有能と言わざるを得まい。
じっと呆然と考え込んでいた慎二は惑うように揺れる眸を上げて、恐る恐る、然し断言の響きを伴う言葉で俺に訊う。
ああ、本当にイイ貌をするな。さぁ、お前は俺の返答に、如何なる答えを其処へ見出す?
全てを偽り、と片付けるのか。それとも俺の話を真実として捉え、何らかのリアクションを起こすのか。
期待に撓る口角をそのままに、じっと見交わす視線をそのままに青い眸を眺めやった。
「だとしたら、如何する?」
「…ああ…貴方にもっと早くお会いしたかった…っ!本来なら、貴方が俺が仕えるべき正当なる我が主…っ」
「ふむ?」
予想外の反応に、小さく驚く。
けれど心の片隅では、ああ、なるほど。とも思った。
そう言えば、コレはウチの邪魔だけでなく、延(ひ)いては【遠坂】の不利になりそうな工作をしていたな、と。
と言う事は、少なからず慎二は今の【遠坂】に反感でも持っているのだろう。まぁ、三代前に吸収されたばかりだし。
コレは随分と屈折した妙なプライドと権力に固執する節が手に取るように分かる為、何がしか思う所はありそうだった。
それに、項垂れる慎二の言は強ちそう間違いのあるものとも言い切れない。
『紅貴妃』が身篭った子が衛宮の血を引く者で無ければ、恐らく、彼女が追放される事も無く、俺は時期当主として【遠坂】勢の人間になっていた筈だ。
故に、慎二の言は間違ってはいない。只、現実は俺が言峰綺礼の息子として【言峰】の後継であると言うだけ。
ふむ…正当なる我が主、ね? 其処まで言われては、俺が拾うしか無いではないか。
「慎二…お前、俺の為に【遠坂】への楔になるか?」
「くさ、び…?」
「そうだ。今からでも遅くない。俺に膝を折る気があると言うなら、俺がお前を使ってやるぞ? お前の手で、【遠坂】を混乱に貶めてみたくは無いか?」
今の【遠坂】が嫌いだと言うのなら、【言峰】である俺に従えば良い。
俺を主と仰ぐ気があるなら、ソレをお前が望むと言うのなら。俺はお前を幾らでも使ってやろう。
これは強制では無い。慎二が自ら選ぶ事に意味がある。嫌なら断れ。それはそれで面白そうだから、俺はそれも赦そう。
どちらでも構わない、と見下ろす慎二の頬にゆるりと触れれば、逆に慎二に手を取られる。
「僕、が…【遠坂】を…?」
「お前が俺の為に働くと言うのなら、な。面白い遊びを教えてやるぞ。如何する? マキリの子…間桐慎二」
「…や、る…やりま、す!言峰、士郎様…僕の真実(ほんとう)の主」
ぎゅう、と強く縋るように握り締められた掌に、完全なる慎二の陥落を知った。
本気で俺を主として仰ぐ気であるらしい。どの程度使える人間かは、分からないが…それは追々探れば良いだけだ。
まさか慎二本人が此方の手に入るとは思わなかった為、少しばかり自分でも驚いている。
然し俺の為に動くと言うなら、大事にしてやろうでは無いか。
折角の貴重なマキリの、最後の純血種だ。血統で言えば折紙付きの最高の人間。
コレはコレで少しばかり歪んでいるが、ソレは濃過ぎる“マキリの血”故、と言えなくも無い。
まぁ、何にせよ。これで慎二は俺のもの。俺のやり方で存分に愛でてやろう。懐くと言うなら、可愛いものだ。
片手を確りとその両手で握られていて、早々離しそうに無い為、空いているもう片方の手で緩く柔らかい色合いの青いクセっ毛を撫でてやる。
そうすれば、不思議そうに視線ごと貌を上げるからそれには薄く微笑み、そっと髪を払った額に一つ口付ける事で主従契約の証を“了承”として示してやった――。
慎二君は…実はあんまりどんな子なのか詳しくは知らないんですけれど、権力に固執している節が見られるので、見下せないくらいの圧倒的なカリスマと実力を備えた存在には弱かろう、と勝手にこんなキャラに捏造。=w=;
真実の悪のカリスマは間違い無く士郎さんなので、凶悪なまでの黒い引力で有無を言わさず惹き付けそうです。(笑)
それで、一度納得して自ら屈したら完全にデレ期。べったり士郎さんに張り付いて離れなさそう。(私は一体、彼にどんなイメージを持っているのか…)
そして、衝撃の事実が発覚。
泥沼ならとことん泥沼にしようぜ、と言う事で士郎さんが【遠坂】の一族出身に。(笑)
切嗣氏がどんどん悪い人になって行っているような気がするのは…果たして私の気の所為だろうか。。。
久々にマフィア設定の昼メロ本編を書いてみた三津峰です。
粗筋だけざっと書いてあったものに、足りない補足と肉付けをして仕上げてみました。
内容的には、一ヶ月程前に書いた二重取引話の後、主である士郎さんに、何とかして
慎二君を掻っ攫って来い、と言われた弓兵が、それを忠実に実行した直後のお話です。(笑)
と言っても、今回は慎二君と士郎さんがメインなんですけどね。
弓兵も最初だけちらっと出ますよ。ええ、ちらっと。。。=w=;
そして、早く書きたくて書きたくてウズウズしていた部分は確り書いた!と、思う。多分。
取り敢えず、衝撃の真実?を此処らで書きたかったので私的には満足しました。(*´ェ`*)
「よくやったな、エミヤ」
従者の小脇に抱えられる少年は、俺が待ち望んだ者。『間桐慎二』。
先日、ちまちまとウチに地味なちょっかいを掛けていた人間だ。
今は薬か、当身か、何れかの手段で以って意識を失っている少年を横目に俺は己が従者に労いの言葉を掛けてやった。
攫え、と言った俺の言葉通り、忠実に命を実行した従者には後で存分に構い倒してやろうと思う。
だが、今はこの少年が先だ。
緻密な計算の上に、漸く今この一時だけ【遠坂】に気取られず会合が果たせるとして、態々この日、この時間の為だけに色々と都合を付けて準備してきたのだ。
それをむざむざ、俺が無駄にするつもりは無い。
「武装は?」
「全て外してある」
「そうか。…では、エミヤ。お前は下がって良い」
事前調査から、慎二相手に二人掛りでは何も情報が引き出せそうに無い事は明白。
手を振って下がれ、と従者へ命じればすぐに訊うような眼差しが返された。
「…マスター。一人で、平気か?」
「ああ。別に如何と言う事は無いし、コレには少し込み入った話をしたいからな」
「ふむ…承知した。では、オレは外で待機しているから、何かあれば呼んでくれ」
「分かった」
ちらと慎二を一瞥した従者は、俺の返答を聞いた後に一つ頷き、さっと踵を返して部屋を出て行く。
流石にそう大して体格の変わらない慎二相手に俺が如何こうされる訳も無し、と判断したようである。
賢明な判断だ。俺も、慎二に体術で負けるとは欠片程度にも思えない。
まぁ、専ら俺の得意分野は銃であるけれど。それは今は良いだろう。当の銃も俺は持っている訳だし。
「さて、と…おい。何時まで寝ている。間桐慎二、起きろ」
靴先で伸びている慎二を頬を小突くようにして、覚醒を促す。
別に蹴り上げて問答無用で起こしてやっても良いが、そんな事をすれば慎二が俺と接触を持った事を【遠坂】へ態々教えてやるようなものだ。
流石に今すぐ殺すつもりがある訳でも無し、貌に傷一つ付けるつもりは無かった。
「間桐慎二。起きろ」
もう一度、常の調子で冷やかに呼び掛けて少し強めに頬を小突けば、漸く慎二から覚醒の兆しを返される。
それを無感動に見下ろす形で眺めてやれば、眸を開いた慎二が俺をその視界に映してから吃驚(きっきょう)の眼差しで後退さった。
「な、だ…誰だよっお前っ!!僕をこんな所に閉じ込めて如何するつもりだ!!こんな事して、唯で済むと思っているのか!?」
「うん?」
「ぼ、僕を誰だか知らないのか!?」
「間桐慎二だろ」
あっさり答えてやれば、なら何故僕を拘束するんだ、と尚も盛大に喚き散らして喧しい事この上ない。
やれやれ、こんなお子様だったとは。もっと冷静で頭のキレる奴かと思えば…何と言うか、拍子抜けだ。
「何だ、中身もてんで子供では無いか。…予想外だな」
「お前だってまだ子供だろ!? 僕と同じくらいだろうが…誰だよ、一体!僕をこんな所に閉じ込めて!」
「…“お前”、ね。まぁ良い。少しは黙れ? 余り喚くと撃ち殺すぞ?」
「っ!?」
呆れて溜息を吐けば、己の立場も忘れて喚くからいい加減面倒になって銃器をちらつかせてやる事にした。
素早く引き抜いた手に馴染んだ銃の照準をピタリと慎二の額に合わせて、微かな笑みを浮かべたままセーフティを解除した状態で向けてやる。
余り其処いらの低俗なチンピラ紛いな行動はしたくないのだが、まぁ仕方が無い。俺は喧しいのは好かないのだ。
殺す気は無かったが、これで黙らなければ即行殺す。小首さえ傾げて眼差し一つでそう告げれば、ようやっと慎二が口を噤んだ。
「ふむ。大人しくなったな」
「何て物騒なヤツなんだ…それから、名前くらい名乗ったら如何なんだ? 無礼だろ」
「ん? ああ、それは失礼したな。俺は言峰士郎だ。無作法で悪かったな?」
慎二の物言いが少しばかり可笑しくて、くつりと喉奥で笑ってから銃を下げ、そのまま序でと名乗ってやれば今度こそぴたりと押し黙られた。
何だ、と思って内心で訝しんでいれば、何やらぶるぶると震える指で人を指差して、じっと視線を固定される。
「………言峰…?」
「ああ」
「【言峰ファミリー】か…ぽっと出の人間が、僕に何の用だ!?」
漸く趣旨を正しく理解したらしい慎二が、ギっと俺を睨み付けるようにして仰ぐから、ああコレはもしかしなくとも、歪んだプライドと権力に固執する類の人間であろうか、との考えが瞬時に脳裏を過ぎった。
恐らく、間違ってはいまい。
俺を“ぽっと出”と称し、先まであからさまに得体の知れぬ俺に怯えていた眸が輝きを取り戻した事からもそれは概ね正しかろう。
身分が低い、と思っているからこそ、俺をそうして見下しているのだ。
典型的な華族、お貴族様思考と言う訳だな。…面白い。
“癇癪持ちの只の子供”そんな詰まらぬ人間ならば殺してやろうかとも思ったが、そう言う事なら少しばかり遊んでやっても良いだろう。
如何言った反応を返してくれるのか、少しばかり興味もあるしな。
邪魔になれば殺せば良い。故に、喜べ。今から俺と親父以外の何人も知らぬ話をお前だけにしてやろう。
「…へぇ? ぽっと出の人間、ね。言ってくれるじゃないか?」
「間違って無いだろ!?」
「ああ。そうだ。間違ってはいないな」
ニヤリと哂い、徐に壁際にまで後退っていた慎二まで歩を進めて、その傍らに膝を突いてやる。
間近に迫った俺が真っ直ぐに睨む慎二の眸を真正面から受け止めてやれば、あからさまに動揺して慎二が怯んだ。
雰囲気に呑まれるようでは、まだまだ子供。
けれど、そうだな。俺を相手にプライドだけで眸を逸らさなかった事は褒めてやっても良いかも知れない。
「…な、何だよ」
「だが…お前が今そうして見下す人間(おれ)こそが、お前が主筋として従う【遠坂】の血に連なる者だとしたら?」
「え?」
告げられた言葉に意表を突かれたのだろう。
一瞬ぽかんと見返された後、次いで薄っすらと紫掛かった青い眸が驚愕に見開かれた。
ああ、イイ貌をする。
うっそりと酷く嗜虐に満ちた笑みで以って撓る口角を其処へ写しながら、俺は慎二の白い頬へ手を伸ばし、静かにその耳元へと内緒話のように甘く囁く。
「それも、直系。お前が膝を折る現当主と同じ血脈に連なる、と言ったら如何するのだ?」
「なっそんな、莫迦な!? 有り得ないっ」
「信じる信じないはお前次第だ…ああ、そうだな。この痣に見覚えは、…無いか?」
極度の震駭(しんがい)に震える慎二をそのままに、立ち上がった俺は、ゆったりと衣服を乱して己の左肩付近を背を向ける形で露にしてやった。
【遠坂】に仕える桜の婚約者なれば、或いはこの痣にも見覚えがある筈。
ちらと、背後を覗けば案の定、慎二の視線が痛い程、背の痣に集中している。
「………そん、な…【遠坂】の…刻、印…っ!?」
「やはりお前も知っていたか。そう、コレは【遠坂】の直系のみに顕れる印らしいな? 俺の母親も、コレと同じものを持っていたよ」
彼女は俺と違って右腕の肘裏辺り。確かその辺にコレと同じ痣を持っていた筈だ。ま、今は如何でも良い事だけれど。
「……ア…アンタ、一体…何者なんだ?」
「…さぁ? 何者だと思う? お前は知っているかな。20年近く前に追放された前当主の娘の話を?」
さっと衣服を直して、向き直り、再び慎二を見下ろす形で薄っすらと口角を撓らせる。
「っこ、『紅貴妃』!?」
「ああ、何だ。知っているのか」
「まさか…彼女は殺された筈だ!【アインツベルン】の手先に!」
「一般的には、な。だが生きていたんだよ。可哀想に。身重の躯で、最下層に放り込まれて、な?」
『紅貴妃』、懐かしい響きだ。
今でこそ、口に乗せる事すら憚られるかの如く忌み名になってしまっているけれど。
確かに当時の社交界と言う表社会から抹殺された彼女の通り名はそんなものだった。
子である俺から見ても、その名に相応しい教養と美しさと品位を備えた女性だったと思う。
そして、同時に愚かしい人でもあった。純粋であったが故に、体良く騙され、利用し尽くされる程度には。
「……」
「よく考えてみろ? 何か可笑しいとは思わなかったか? 何も疑問には思わなかった?
…本当に?」
深窓のご令嬢宜しく【遠坂】に厳重に護られた、真実、前当主の自慢の娘であった筈の彼女が、何故【アインツベルン】に容易く生命を奪われた等と信じられるのか。
彼女は死んでなどいなかった。何故ならば、その当主にこそ生かされたまま最下層に放り込まれたのだから。
あの刻、せめてもの情けで殺してやれば良かったものを。
俺を身篭ったと知った当主が、浅はかにも己が激情に任せて、傅かれる事が当たり前であった者をよりにもよって最下層などに放り込んだのだ。
何の援助も無いままに。文字通り、勘当、と言う名の追放処置として。
「彼女の墓を見た事があるか? 誰か其処を訪れる者は? 【アインツベルン】に生命を奪われたと言うならば、そもそも如何様にその収拾が付けられた?
…幾ら調べようと、彼女の死の痕跡など何一つ無く、溺愛と言って良い程可愛がられていた割りに、不自然なくらい話題に上る事が無いだろう?」
莫大な金と力で全てを捩じ伏せてまで巧みに隠蔽されているだろう事実。一般的には、恐らく欠片たりとも知らされていないだろうソレ。
けれど、コレは曲りなりにも直系の【遠坂】に仕える人間(モノ)。
少しでも何かが引っかかり疑問に思っていれば、ほんの一欠けらだろうと何かしら調べている筈だ。
『紅貴妃』の通り名がすぐに出て来るくらいだし、ある程度は識っていると見て間違いは無い。
俺の出生など、最上級のトップシークレット。俺と育ての親であり、実質今現在の父親である綺礼以外、何人たりとも知り得ない極秘事項である。
「…衛宮…の、子…」
「うん?」
「アンタ…いや、貴方、は…『紅貴妃』と衛宮切嗣の…子、ですね?」
愚かだが、頭は悪く無いらしい。寧ろ、よく単独で調べた方だろう。
ほんの少し与えたヒントで徹底して幾重にも隠された真実の中、俺と衛宮を結び付けるとは、な。
暗躍していた衛宮の話など、当時でも『紅貴妃』の懐妊が知れるまで【遠坂】にすら知られる事は無かったと言うのに。
上層部しか知らず、その上層部が直(ひた)隠しにしているソレを識るとなれば、中々有能と言わざるを得まい。
じっと呆然と考え込んでいた慎二は惑うように揺れる眸を上げて、恐る恐る、然し断言の響きを伴う言葉で俺に訊う。
ああ、本当にイイ貌をするな。さぁ、お前は俺の返答に、如何なる答えを其処へ見出す?
全てを偽り、と片付けるのか。それとも俺の話を真実として捉え、何らかのリアクションを起こすのか。
期待に撓る口角をそのままに、じっと見交わす視線をそのままに青い眸を眺めやった。
「だとしたら、如何する?」
「…ああ…貴方にもっと早くお会いしたかった…っ!本来なら、貴方が俺が仕えるべき正当なる我が主…っ」
「ふむ?」
予想外の反応に、小さく驚く。
けれど心の片隅では、ああ、なるほど。とも思った。
そう言えば、コレはウチの邪魔だけでなく、延(ひ)いては【遠坂】の不利になりそうな工作をしていたな、と。
と言う事は、少なからず慎二は今の【遠坂】に反感でも持っているのだろう。まぁ、三代前に吸収されたばかりだし。
コレは随分と屈折した妙なプライドと権力に固執する節が手に取るように分かる為、何がしか思う所はありそうだった。
それに、項垂れる慎二の言は強ちそう間違いのあるものとも言い切れない。
『紅貴妃』が身篭った子が衛宮の血を引く者で無ければ、恐らく、彼女が追放される事も無く、俺は時期当主として【遠坂】勢の人間になっていた筈だ。
故に、慎二の言は間違ってはいない。只、現実は俺が言峰綺礼の息子として【言峰】の後継であると言うだけ。
ふむ…正当なる我が主、ね? 其処まで言われては、俺が拾うしか無いではないか。
「慎二…お前、俺の為に【遠坂】への楔になるか?」
「くさ、び…?」
「そうだ。今からでも遅くない。俺に膝を折る気があると言うなら、俺がお前を使ってやるぞ? お前の手で、【遠坂】を混乱に貶めてみたくは無いか?」
今の【遠坂】が嫌いだと言うのなら、【言峰】である俺に従えば良い。
俺を主と仰ぐ気があるなら、ソレをお前が望むと言うのなら。俺はお前を幾らでも使ってやろう。
これは強制では無い。慎二が自ら選ぶ事に意味がある。嫌なら断れ。それはそれで面白そうだから、俺はそれも赦そう。
どちらでも構わない、と見下ろす慎二の頬にゆるりと触れれば、逆に慎二に手を取られる。
「僕、が…【遠坂】を…?」
「お前が俺の為に働くと言うのなら、な。面白い遊びを教えてやるぞ。如何する? マキリの子…間桐慎二」
「…や、る…やりま、す!言峰、士郎様…僕の真実(ほんとう)の主」
ぎゅう、と強く縋るように握り締められた掌に、完全なる慎二の陥落を知った。
本気で俺を主として仰ぐ気であるらしい。どの程度使える人間かは、分からないが…それは追々探れば良いだけだ。
まさか慎二本人が此方の手に入るとは思わなかった為、少しばかり自分でも驚いている。
然し俺の為に動くと言うなら、大事にしてやろうでは無いか。
折角の貴重なマキリの、最後の純血種だ。血統で言えば折紙付きの最高の人間。
コレはコレで少しばかり歪んでいるが、ソレは濃過ぎる“マキリの血”故、と言えなくも無い。
まぁ、何にせよ。これで慎二は俺のもの。俺のやり方で存分に愛でてやろう。懐くと言うなら、可愛いものだ。
片手を確りとその両手で握られていて、早々離しそうに無い為、空いているもう片方の手で緩く柔らかい色合いの青いクセっ毛を撫でてやる。
そうすれば、不思議そうに視線ごと貌を上げるからそれには薄く微笑み、そっと髪を払った額に一つ口付ける事で主従契約の証を“了承”として示してやった――。
慎二君は…実はあんまりどんな子なのか詳しくは知らないんですけれど、権力に固執している節が見られるので、見下せないくらいの圧倒的なカリスマと実力を備えた存在には弱かろう、と勝手にこんなキャラに捏造。=w=;
真実の悪のカリスマは間違い無く士郎さんなので、凶悪なまでの黒い引力で有無を言わさず惹き付けそうです。(笑)
それで、一度納得して自ら屈したら完全にデレ期。べったり士郎さんに張り付いて離れなさそう。(私は一体、彼にどんなイメージを持っているのか…)
そして、衝撃の事実が発覚。
泥沼ならとことん泥沼にしようぜ、と言う事で士郎さんが【遠坂】の一族出身に。(笑)
切嗣氏がどんどん悪い人になって行っているような気がするのは…果たして私の気の所為だろうか。。。
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